第2話 就業後はプライベートの時間

■新たなトラブル! 会社の飲み会

 野口のコンサルティングもすでに一ヶ月が過ぎました。定例のミーティングもなんだかんだでコミュニケーションがとれている様子です。
おや……定時が過ぎた営業3課になにか起きているようです。

 張切「実直さん、今度の課の飲み会、天辺さんが行かないって言ってるんスよ……」
困った顔で張切さんが実直マネジャーに相談しているようですね。 とりあえず、話だけでも聞いてましょう。

野口「実直マネジャー、何かあったんですか?」
実直「あ、野口先生! ちょっとご相談が……」

 実直マネジャー、メンバーとのコミュニケーションもとれてきたところで、チーム結成1ヶ月を記念して飲み会を来週末に企画したようです。

?2日前?
実直「というわけで、来週末、親睦会も兼ねて飲み会をしたいと思っています。このチームが出来て1ヶ月になるし、いいタイミングだと思うしね」
張切「それじゃ、僕がいい店探しておきますよ」
実直「あ、それじゃ、張切くんに幹事もお願いしようかな」
張切「了解ッス!」

……
張切「という感じだったんですが、天辺が『おれは行かない。行く理由がない』って言い出して、部署内も微妙にギクシャクしてるんですよ……」

■会社の飲み会とは何なのか

 結束を深めるために開こうと思った飲み会、そのはずなのになぜかギクシャク……。実直マネジャーもそうですが、張切さんが少しかわいそうですね。

そもそも会社の飲み会の意義はなんでしょうか?
少し実直マネジャーに考えてもらいましょう。

実直「改めて考えると意外に出てきませんね……」
野口「実直マネジャーはなぜ『飲み会をしたい』と思ったんですか?」
実直「それは、チームの結束を深めたいと思ったからですね」

明確な目的として“リレーションを築く”ということが目的ですね。
チームのリレーションが築ければ売上も上がるはず、そう考えたんですね、うんうん。
では、改めて会社の飲み会で得られる効果などを書きだしてみましょう。

  • 時間を共有することで仲良くなれる
  • 事務的な内容ではなく、場の雰囲気などで本音の部分が引き出せる

書きだしてみると良い事づくしですね。
実際、飲み会をうまく使っている人もいて、普段は腹を割って言えない「どうしたらいいのかわからない」などの根本的な悩みの相談や顧客タイプごとの営業テクニックを聞き出して、自分のものにする営業マンもいるにはいます。

しかし、この時代、天辺さんだけでなく飲み会自体へのイメージはよくありません。 こちらも少し書きだしてみましょう。

  1. 仕事は仕事、遊びは遊び
  2. 都合のいい体育会系
  3. お金の問題

おおまかに書くとこんな感じですね。

実直「たしかに……」
野口「あら、実直マネージャー、えらく深刻な顔してますね。どうしたんですか?」
実直「実は僕も、部の飲み会とか苦手だったんですよね」

実直マネジャーはなんだかんだで真面目ですからね。なんとなくそういう気がしていました。
次ではどうすれば、みんなが参加する飲み会になるのか? を考えてみましょう。

■参加させる飲み会から参加したいと思わせる飲み会へ

実直「僕は『これは仕事なんだ』って思って自分を納得させていましたが、割り切れない人もいますよね」
野口「その通りです。みんな歩んできた人生が違いますし、価値観は違って当たり前です」
実直「1も2も3も、僕にはよくわかります……」

実直マネジャー、いろいろ思い出したようですね。
では、少し掘り下げましょう。

  1. 仕事は仕事、遊びは遊び
     仕事の時間とプライベートの時間を区切るサラリーマンも増えてきました。あらかじめ予定を組んでいたり、仕事でのストレスを趣味で解消する人も多いですね。
    そういう人は、メリハリをしっかりつけているので、仕事とプライベートの混じる飲み会を好まない人もいます。就業時間の終わったあとに、『会社の関係が継続する』時間が続くのは、そういった人には苦痛でしょう。
  2. 都合のいい体育会系
     これは男性の方が実感できるのではないでしょうか。会社での立場を基準にあれこれ命令などをし、肝心な所では面倒見が悪い先輩や上司……。たしかにこういう人のいる飲み会には参加したくないですね。
  3. お金の問題
     会社の飲み会が割り勘だとキツイ……という声は、意外といろんな場所で聞きます。 参加者全員の可処分所得が同じであれば問題ないのですが、決して多くもらっていないメンバーもいたりしますし、参加費用の問題はデリケートな問題ですし、なかなか表面に出てきません。ここをどう察することができるかも、重要だと言えます。

実直「確かにそうですよね。仕事終わったのに、偉そうにされて、お金も払わないといけないのは辛いと僕も思います。極端な例だとは思いますが、まとめて書きだすと破壊力がすごいですね」
野口「こういったネガティブ尽くしな飲み会はさすがに少ないと思いますけど、みんなそれぞれ感じることはあるのが、会社の飲み会ですからね」
実直「わかります。僕も会社の飲み会苦手でしたし。でも、逆手にとってこれさえしなければ! というポイントがわかって良かったです」

実直マネジャー、ポジティブなのは素敵ですね。

■全員参加して欲しい。ではどうすれば?

 飲み会の運営はバッチリ! な実直マネジャー。しかし、問題は未来ではなく”天辺さんが不参加“という間近に迫っている現実です。

実直「僕はどうすればいいんですかね……」
野口「実直マネージャーは、お客様がアポを断ったらどう思いますか?」
実直「えーっと、忙しいのかな? 都合が合わなかったのかな? って思いますね」
野口「天辺さんもそうなんじゃないんですか?」

 都合が合わないことは仕方ないです。
そこで行動の選択肢がいくつか出ると思います。
たとえば、“ムッとするという自己中心的な姿を見せる”上司と”どうすればYESと答えてくれるのか? を考える”上司、どちらが素敵ですか? という話です。

天辺さんは営業3課が嫌いというほど日が経っているわけではないですし、彼は仕事に対しては真摯に向き合い、一人で解決していくタイプですしね。

実直「僕と天辺くんは同期ですし、直接聞いてみますよ」
野口「それがいいです。ただ、答えにくいことかもしれませんので、かならず2人きりで話すんですよ!」
実直「わかりました!」

さて、無事に解決するのでしょうか? 様子を見てみましょう。

実直「おーい! 天辺?!」
天辺「おう。ひょっとして、飲み会のことか? 俺は参加しないぞ」
実直「なんでだよ。せっかくなんだし……なんか、用でもあるのか?」
天辺「俺は、仕事とプライベートの区別はしてるつもりなんだよな。それは、お前もしってるだろ」
実直「知ってるけどさ、せっかくチームで集まるんだし」
天辺「夜はジムとかで忙しいんだよ。大体俺は結婚してるんだぜ。仕事終わった時間にどうこうって嫌なんだよ」
実直「……! それじゃさ、仕事の終わっていない時間の昼飯はどう? 就業時間内といえばそうだし、ね」

天辺「た、たしかに仕事の時間といえば仕事の……って、休憩時間じゃないか!」
実直「ふふふ……休憩時間ではあるけど、就業時間内っぽい感じでもあるだろ?」

天辺「しゃあねえな?。ま、ランチならいいか……トンチみたいだな……」
実直「ありがとうな! 日程調整しておくよ」

天辺「はいはい……」

呆れ顔の天辺さんと実直マネジャー、なんかいいコンビに見えてきましたね。
同期内では一番の切れ者の天辺さん、淡々とこなすタイプの実直マネジャー、ライバルのようで意外といいコンビになるのかもしれません。

■飲み会ならぬ、ランチ会の開催決定

笑顔の実直マネジャー、今日も朝礼です。

実直「おはようございます。いつもの予定報告の前に、僕から提案があります」
実直「飲み会ではみんなの都合が合わない……というわけで! 営業3課ランチ会を開催したいと思います。すでに、天辺くんも参加することになっています!」
張切「マネージャーやりますねー! 僕がそのまま店を選ぶ感じでいいんスか?」
実直「張切さん、よろしく! あ、でも、僕が出すのでお手柔らかに……できればリーズナブルなお店で……」
張切「お任せくださいッス」

賑やかな朝礼になっているようです。たまにはこういう朝礼もいいですね。

音無「僕はお酒飲めないんで、お昼ごはんで良かったですよ……ふぅ……」
花咲「あー、弱腰さん飲めないんですよね?! あ! 私、ランチだったらイタリアンがいい!」

天辺「……朝から元気だな……。実直…マネジャー、飲み会も2週間以上前なら空けるよ。あと、ランチはごちそうになるんで、よろしくな」

 プライベートを大切にするメンバーがいて当たり前ですし、お客様の場合はいろいろと気を遣うのに自分のチームには偉そうにできる……なんて、ちょっと嫌な上司ですもんね。

 しかし、実直マネジャー、ランチ会をおごるなんて大丈夫なんでしょうか?

そして、一ヶ月後……。

花咲「なんで、私ばっかり……うっ……うっ……」
音無「あ、その! その! 実直さん!」

何やら、花咲さんと音無くんに何かあったようですね。
またまた、実直マネジャーに新たな試練です!

第3話へ続く……